続編好き?

『Nine Lives』がある意味、『About Time』の続編的な側面を持っていることは、スティーヴ自身も認めるところですが、こういった同ベクトルのアルバムが2枚続く傾向は、特に70年代後半以降活動のほとんどで見られることがわかります。
わかりやすいところでは80年の2nd『Arc of A Diver』と82年の3rd『Talking Back To The Night』は完全ワンマン録音の2連作でしたし、次の86年4th『Back in the High Life』と88年の5th『Roll with It』は逆にミュージシャンを大勢使った賑々しい作風という意味では連作のイメージもありました。
思えば77年の初ソロ『Steve Winwood』にしても、ジム・キャパルディの参加もあって、トラフィック74年の『When The Eagle Flies』が持っていた世界をよりヴィヴィッドに進化させた内容にも聞こえてくるし、トラフィック94年の再結成盤『Far From Home』はその4年前のソロ作『Refugees of the Heart』の世界観をキャパルディと二人で拡大したようでもある、ということで、それぞれ続編的な感触を持ったペアではないか、という風に感じられます。
そう考えると97年の7th『Junction 7』は何かぽつねんと取り残されているように感じる訳ですが、コンテンポラリーなプログラミング・サウンドは『Far From Home』での実践をそのままナラダ・マイケル・ウェルデンに委ねてみたようでもあるし、ラテン・パーカッションの味わい、もっといえばトラフィックの再編ツアーから『Junction 7』を経て『About Time』のツアーまで参加しているウォルフレイド・レイエスJr.の存在が、94年からの音楽性の推移の中で重要な役割を担って、スティーヴの変化に影響を与えていたようにも思え、これまた興味深く見えてきます。
さらに『Back in the High Life』のデモ音源というのがかつてブートで出回っていまして、これが打ち込みで一人作っているものなんですが、どう聴いても『Arc~』や『Talking~』の延長上の音なんですね。ここにプロデューサーのラス・タイトルマンという違った力を加えることであのアルバムができあがった訳で、『Back in~』が決して突然変異だったのではないこともわかります。(Backという単語が共通してる、なんてのはコジツケでしょうが…)
要は2つ連作を作るのが好き、という話でも、成功したから二匹目のドジョウを…ということでもなく、一枚作ったら、そこで得たものをさらに拡大なり進化なり深化させたくなるのだろうし、どれにも確実に次につながる何かが入っている。もちろんこれはスティーヴにだけ見られる傾向というわけではないし、うまくいったものも、そうではないものもある気はしますが、彼の音楽との関わり方が出ているんじゃないでしょうか。
突如テクノやパンクになったり、カントリーになったりするニール・ヤングや、アレンジや歌い方をコロコロ変えたりするボブ・ディランといった人は、シンガー&ソングライターの核がドーンとあるがゆえの浮気なサウンド指向だったりすると思うのですが、純然たるシンガー&ソングライターとは少し違ったタイプのスティーヴは、サウンドと曲、歌詞などを全て同列にとらえた音楽全体でものを考える人だろうし、音楽そのものに必ず過去と現在を繋ぐものが見えるのも、いろいろなものを注意深く消化して、ゆっくり自分のものにしていく彼の資質に所以するものかもしれません。
そんなことにポイントを置いて、数あるスティーヴのアルバムを並べて聴いてみるのも、また楽しいんじゃないかという気がします。
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