Crossroads Guitar Festival

エリックはさまざまな出演者に客演したり、司会のビル・マーレーのギャグにからんだり、若い奥さんと二人で舞台ソデで写真をとったり大活躍です。もちろん自分のパートでは、デレク・トラックス、ウィリー・ウィークス、スティーヴ・ジョーダンらを含む2006年からの強力な自分のバンドをバックに、この数年では最も充実した演奏を繰り広げていることは、昨年の来日公演を体験した人ならDVDを見るまでもなく予想できると思います。
とにかくすごいとしか言いようのない場面の連続で、3年前のDVD同様思わず目眩がしてきます。しかし本ブログのタイトルから分かる方がいらっしゃるかもしれませんが、私はスティーヴ・ウィンウッドの熱烈なファンですので、ここでは彼の登場パート中心の話です。
このDVDがスティーヴを5曲もフィーチャーしていることからも分かるように、今年のこのフェスはブラインド・フェイスの盟友同士のエリックとスティーヴの共演が大きな目玉でした。このしばらく前にイギリスでのスティーヴのコンサートにエリックが出演し、ブラインド・フェイスの"Presence Of The Lord","Can't Find My Way Home","Had Cry Today"などを演奏。以下はその模様ですが、エリックのギターがイントロで一発盛大にミストーン出してるのはご愛敬…。
今度はエリックのバンドにスティーヴが客演する形。エリックのバンドには ウィリー・ウィークスがおり、彼はスティーヴの最初のソロ・アルバムにベーシストとして参加していましたから、これまた感慨深い共演です。現代最高峰のギタリスト、デレク・トラックスとスティーヴの初共演というのも見所。彼がスティーヴの曲であの独特なスライドを聴かせてくれるのもたまりません! 単にブラインド・フェイスの再現ではないのは新旧どちらのファンも納得じゃないかと思います。
ちょっと年をとって、往年の高域は少々苦しくなってきましたが、スティーヴもかなり気合いが入っていたようです。エリックとのデュエット形式となった"Presence Of The Lord"は非常に感動的な出来ですし、2003年以降はBフラットまでキーを下げていた"Can't Find My Way Home"も、オリジナルの半音下げのDフラットにまで戻してきました。エリックのバンドからリズムセクションを借りる形で演奏されるトラフィックの代表ナンバー"Dear Mr Fantasy"も、自分のバンドで演奏するのとはまた違った味わいを見せています。ギタリストとしてのスティーヴの個性にも注目。エリックのスムーズなフレージングに対し、ザクザクと無骨なトーンで、引き摺るようなタイム感で攻めるスティーヴのギター・ソロは、あのスペンサー・デイヴィス・グループの時代からの首尾一貫した個性です。
来年2月にはニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでスティーヴとエリックの共演コンサートが開かれることはご存じの方も多いと思いますが、どんな内容になるのか非常に楽しみです。できることなら現地に駆けつけたいところですが…。
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Dear Mr Fantasy

ずいぶん早いものですが、今年の1月にロンドンのラウンドハウス・シアターで開催された彼のトリビュート・コンサートが早くもDVD化されました。快挙!
ただ、日本盤も発売されたのはいいのですが、日本語字幕はついていないのは私のような英語の聞き取りに難のある人には不親切かも…。
もちろんジムのトラフィックの相棒、ご存じスティーヴ・ウィンウッドが企画したものですが、そのスティーヴは勿論、ジョー・ウォルシュ、ピート・タウンゼンド、ポール・ウェラー、ヨゼフ・イスラム(ことキャット・スティーヴンス)、ゲイリー・ムーアなど、ブリティッシュ・ロックの大物が多数参加。大いに盛り上がった様子が伺えます。
司会を務めるのはBBCの名物音楽番組だった"The Old Grey Whistle Test"のボブ・ハリス(彼も年をとりましたね…)。
他にもジョン・ロードやビル・ワイマンが脇を固める曲もありますし、名セッション・ドラマーであり、スティーヴの1stや、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの『Fresh』での革命的プレイでも知られるアンディ・ニューマークがライヴで叩く姿も貴重。
フリーやバッド・カンパニーで活躍したサイモン・カークはずいぶんスッキリした万年青年ぶりでなんとリード・ヴォーカルまでとっちゃいます。これも実に楽しそうなんですよね。
エリック・クラプトンの73年の復帰コンサートでジムと共演したピート・タウンゼンドが当時の思い出を振り返りつつ、トラフィックの名曲"No Face, No Name, No Number"を独自の解釈で弾き語る場面もハイライトのひとつ。
そして、トリではなく中盤で、ジョゼー・ネトを中心とした自分のバンドを率いて登場するスティーヴ・ウィンウッドは、トラフィック時代のジムの持ち歌だった"Light Up Or Leave Me Alone"を熱唱。これもまた見もの。ファンキー度をアップした新しいアレンジで、スティーヴの最近のツアーでは定番になりつつあります。
そして、最近スティーヴの登場するDVDでも必ず歌っている"Dear Mr Fantasy"もバッチリ決めてくれます。
正直言ってソロ活動で成功したとはいえないジムが、このような大きなリスペクトを受けているというのを不思議に思われるかもしれませんが、彼の作詞がなければトラフィックの名曲の数々は生まれていなかったわけで、詩人としての才能には特別なものがありました。
もちろんその人柄が多くの人を惹きつけていたのはDVDを見てもよくわかります。
しかし、クリス・ウッドも亡き今(デイヴ・メイスンは生きてはいますが…)、トラフィックの再編はあり得ないのだな、と思うと寂しさを覚えるのは私だけではないでしょう。
ジムへの謝辞をコメントするスティーヴの表情にも、それがアリアリで、時の流れを感じてしまうひとときです。
ちなみに、ご紹介したDVDのほかに、同内容のCD版も発売されています。